Thursday 1 September 2011

編み物

いつも思うのですが、編み物するのには夏が都合がいい。日が長く、朝4時半くらいから夜10時くらいまで自然光でできるから。冬は極端に日が短くて自然光で手仕事ができるのは7、8時間くらい。ずっとこの国の暗めの照明で編み目なんぞ見ていると目がとても疲れてしまいます。

などと人に言うと、私がセーターとかベッドカバーとか、大作をばんばん作ってるんだと良い方に考えてくれるのでしっかりと前置きしないといけません。編むと言ってもマフラー専門なのですと。

小学生の頃に手先の器用な叔母が鈎針編みを教えてくれ、野生児なくせに人形遊びも大好きだった私は、叔母から余り毛糸をもらい、リカちゃんのスカートなどをぐるぐる編んでいました。
たいして器用な方ではない上に大雑把な私はうまく編めないことに苛立ち、人形のスカートを何着かと敷き物みたいなものをいくつか編んだ後は飽きてしまい、編み針もなくしてしまいました。
それから20数年。
ある日、いつものようにTSUTAYAでぶらぶらしているとふと編み物の本が目に留まり、なぜかものすごく編みたい衝動におそわれ、すぐにその本を購入するとそのまま手芸用品店に直行して鈎針と毛糸をいくつか買い、その年の冬休みは毎日編み物をして過ごしました。久しぶりで何にも覚えていなかったので本を見ながら編んではほどき、ほどいては編み、ようやく息子のマフラーが完成。
折りしも、時はハリウッドスターたちの間から広まった(ジュリア・ロバーツなんかが撮影の待ち時間に編み物をしていた)大編み物ブーム期。Stitch n' Bitch、Knitting Cafeなどという言葉を雑誌で見たり、日本でもくわえ煙草で編み物をする男性の姿がテレビでレポートされたりしました。チャッキーがジャパンタイムスだったかデイリーヨミウリだったか(もしくは別の新聞)で『英国の刑務所、囚人の活動に編み物を取り入れる』という記事を目にしたのもその頃。まだ小学生だったオレサマが自分も編んでみたいというので教えてあげたりしました。

棒針編みを始めたのはイギリスに来て最初の冬。
日本から持ってきた棒針編みの本だけではわからなかったので町の本屋さんで編み物の本を何冊か見てみたけれど、日本とはちょっと編み方が違うということに気づき自分の本をまた見直して。鈎針編みの時とは比べ物にならないくらいの試行錯誤を繰り返してようやくスムーズに編めるようになりました。

でも編むものといったらやっぱりマフラー。ひたすらまっすぐ。
細めの、カシミアの毛糸で編みたかったのだけど町のデパートにある手芸コーナーでは注文しないとないと言われたので、ベビーアルパカの毛糸を選びました。柔らかくて肌触りがよくてそれはそれは素敵な感触。

編み物の達人に話したら、なーんだマフラーか。私はセーターもカーディガンも1週間で編んでいたものよ、と笑われてしまったけれど、いいんです。私はセーターもカーディガンもお店で買います。Bodenのディテールにこだわったかわいいニットウェアなんか自分で編めませんもん。
私にとって編み物は心を癒す時間。ひたすら棒針や鈎針を動かして毛糸をすくうだけ。下手の横好きが織り成す編み目の饗宴。表目裏目、二目ゴム編み鹿の子編み。連続して編むのは1時間が限度で、その気になるまでは数週間放りっぱなしなんてこともしょっちゅう。

8月の半ば、木の葉の色が変わり始めたなと思ったら、昨日、通りにはもう落ち葉がカサカサと音をたてていました。秋です。世間的に季節的に編み物を始めるときです。
先日町のデパートの手芸コーナーで落ち着いた色合いのモヘアの毛糸を見かけました。誕生日が近い人がいるので、そのlovelyな毛糸で今年最初のマフラーを編もうかな。そして今年は手袋なんかも編んでみたいな、とこう思っている9月1日の私なんでした。

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